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人間を超越する力

2010 年 6 月 7 日 月曜日

この先,残虐な表現がありますので食事中の方や心臓の弱い方は読まないでください。

人間の周りには運動エネルギーがあふれています。そのほとんどは,人間が自らのために利用する交通機関です。自らの利便性のために運動エネルギーを発生させているのにも関わらず,その運動エネルギーが人間に危害を加えることがあります。

交通事故です。ここでは人間と各交通機関が一対一で衝突したケースを考えてみます。最も頻発するのが人間と乗用車が衝突するケースです。

運動エネルギーは速度の二乗と質量に比例します。そのため速度が一定であれば運動エネルギーは運動体の質量によって決まります。

乗用車の質量は概ね 1 トンから 2 トンです。600 kg くらいの軽い車もありますが,いずれにせよそれほど大きくはありません。私も何度か車に衝突したことがありますが,速度が小さければ,この通り生還できています。私は全て打撲で済みましたが運が悪ければ骨折していたことでしょう。その程度です。この程度のエネルギーなら人間は生還できることが多いと思います。人と乗用車がぶつかると,乗用車の方がべっこりへこみます。車体が衝撃を吸収するように設計されているからです。換言するとできるだけ人間を超越しないように設計されてます。

しかし,トラックとなるとどうでしょう。10 トントラックなら車両総重量は最大で 20 トン。乗用車の 10 倍以上の質量です。ということは運動エネルギーも 10 倍以上です。このクラスになると衝撃を吸収するようには設計されないでしょう。あまりに運動エネルギーが大きすぎて衝撃を吸収しきれません。時速 180 km の乗用車 (2 t) と時速 60 km のトラック (20 t) の運動エネルギーはおおむね等しい。トラックとぶつかるとただでは済みません。大概は死ぬでしょう。私の大学時代の先輩は単車にまたがり右折待ちをしていたところ,対向車線を走るトラックが突っ込んできて右足の太ももを複雑骨折しました。今でも杖をついています。

私の父がよく言っていました。歩行者が信号待ちをするときは車道すれすれで待つのではなく,歩道の端で,かつ,ガードレールに守られているところで待つのが望ましいと。残念ながら,道路交通法というルールは守られないことの方が多いです。車に突っ込まれてから「ルールを守らない方が悪い」と言っても何の解決にもなりません。歩行者としてできる最大のことは,車に突っ込まれないように注意することです。

さて,次に身近な交通機関といえば電車です。これの質量は大変大きい。ざっとみつもって 1 両 40 トンだとして 15 両編成だと 600 トン。乗用車の 300 倍,10 トントラックの 30 倍です。時速 180 km の乗用車 (2 t) と時速 10 km の電車 (600 t) の運動エネルギーはおおむね等しい。時速 15 km の電車と時速 260 km の乗用車の運動エネルギーはおおむね等しい。電車も衝撃を吸収するようには設計されないでしょう。電車の持つ運動エネルギーは完全に人間を超越しています。時速 10 km だとしても恐ろしく暴力的なエネルギーを持っています。線路には近づいてはなりません。

私は駅のホームを線路沿いに歩くときは,いつも心のどこかで恐ろしいと思いつつ,絶対に線路に落ちないよう人にぶつからないように心がけています。

何故,急にこんなことを書いたかというと,今日,人身事故を目の当たりにしたからです。

本日 6 月 7 日 16 時頃,松戸駅の 3 番線にて人身事故がありました。

3 番 4 番線ホームに降りる階段は 4 つありますが,私はそのうち最も上野側の階段を降りました。そして,すぐに右回りに U ターンして 3 番線沿いに柏側に向かいました。北千住駅で千代田線に乗り換えるためには階段のすぐ下の乗り口が都合が良いのです。U ターンすると 3 番線の電車が松戸駅に入ってきているのが見えます。これから電車とすれ違うことになるので,ちょっと恐い思いをするなと思いました。U ターンしてすぐのところは特に狭いですので。

それから電車以外にも人の列がいくつか見えます。電車を待つ人の列です。私から見て何列目と何列目の間かは分かりませんが,人の列の間から線路に向かって飛び込む人が見えました。ちょうど,電車に向かってヘッドスライディングをしているような形です。突っ込む速度はそれほど大きくなく倒れ込むという表現が正確かもしれません。うつ伏せに頭から線路に落ちて,ひっくり返ってあお向けになったところを電車が通過しました。電車の 1 両目にはバンパーのようなスカート状のもの (排障器というそうです) がついていますが,人体はその下に消えていき視界から消えたところで「バツン」という大きな破裂音がして少し走行してから電車は停まりました。

普通,車が人を轢くときは,車体が人に乗り上げるため車体が上に持ち上がります。しかし,今回は電車は全く微動だにしませんでした。考えられる理由は 2 つ。人に乗り上げずに人を押すような状態になったか,人の厚さが 0 になったかです。厚さが 0 ということはこの場合は切断です。音から判断して今回はおそらく後者。完全に即死でしょう。不幸中の幸いですが,完全に電車の下側のホーム側の車輪での出来事だったので肉片等は見えませんでした。

これを同僚の何人かに話したところ,「自殺?」と聞かれましたが,私は当事者ではないので分かりません。ただし,頭から落ちていったということから考えて事故だと思います。自殺なら足から落ちるでしょう。仮に,ヘッドスライディングを選択したとしてももう少し突っ込む速度が大きいと思います。何らかの理由でホームから転落したのではないかと思います。歩いていて誰かに肩がぶつかったのか,病気で倒れたのかは分かりません。いかなる理由にせよ遺族の皆様にはお悔やみ申し上げます。

そもそもあれだけの運動エネルギーを持つ電車と簡単に接触できるような構造がおかしいと思います。モノレールや丸ノ内線のように転落防止の柵 (ホームドアというそうです) をホームに設けるべきだと思います。しかし,転落してから「ホームドアを設けるべきだ」と言っても命は戻らないので,我々も転落しないように気をつけるべきです。皆さんも駅のホームや踏切では十分に注意してください。


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