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自作自転車のヘッドセット

2012 年 1 月 22 日 日曜日

自作ロードバイク (自転車) のパーツ紹介。ヘッドセット。

ヘッドセットとは自転車のメインフレームとフロントフォークをつなぐ部品です。メインフレームのヘッドチューブ部分に存在します。ヘッドパーツとも呼ばれます。ヘッドセットが存在することにより前輪を左右に回すことができます。

ヘッドセットには色々な規格があります。しかし、どんなヘッドセットでも装着できる訳ではありません。フレームのヘッドチューブの形状により使用できるヘッドセットが限定されてしまうため、特定の規格のヘッドセットしか装着できません。そのため、フレームのデータシートには必ずヘッドセットの規格が明記されています。

何も知識がないとヘッドセットの規格はカオスにしか思えませんが、規格を種類とサイズに分けて考えると分かりやすいです。ヘッドセットの種類は下記の通りです。

ヘッドセットの種類

ヘッドセットの種類は大きく Thread スレッドと Ahead アヘッドに分けられます。Ahead アヘッドは更に 3 つに別れます。Threadless スレッドレスと ZeroStack ゼロスタックと Integrated インテグレーテッドです。まとめると下記の通り。

  • Thread スレッド (Threaded スレッデッド)
  • Ahead
    • Threadless スレッドレス
    • ZeroStack ゼロスタック (Semi-Integrated セミ・インテグレーテッド)
    • Integrated インテグレーテッド (Integral インテグラル)

Thread スレッド (ねじきり)

Threaded スレッデッドとも言われます。ピスト車や実用車でよく使われます。装着に圧入が必要です。Thread には「糸」という意味もありますが「ねじ」という意味もあり、自転車業界では (タイヤの糸密度 TPI を除けば) 後者の意味でしか使われません。日本では Thread スレッドとは言わずに「ねじ切り」と言うことが多いと思います。フォークコラムにねじが切ってあるフォークに使用するヘッドセットです。ヘッドチューブは何の加工もないプレーンなパイプ形状です。

Ahead アヘッド

字義的には Ahead アヘッドと Threadless スレッドレスは同義なはずなのですが、広義の意味で使われるときは Ahead アヘッド、狭義の意味で使われるときは Threadless スレッドレスと呼ばれるようです。

Threadless スレッドレス

クロモリ車でよく使われます。装着に圧入が必要です。External Cup (外部ヘッドセット) を指します。広い意味で言えばゼロスタックやインテグレーテッドもねじがないので Threadless スレッドレスと言えるはずですが、そういう表現は一切しません。ヘッドチューブの形状は Thread スレッドと同じですがフォークコラムにねじ切りがされていません。装着するためにはベアリングカップをフレームに圧入する必要がありますが、ヘッドチューブの中に入るのはベアリングカップの接合部だけでベアリングカップ本体はヘッドチューブの外部に位置します。

ZeroStack ゼロスタック

マウンテンバイクでよく使われます。装着には圧入が必要です。ZeroStack ゼロスタックという単語自体は Cane Creek の商標です。Chris King では InSet インセットという商標です。商標で呼ぶことは好ましくないということで Semi-Integrated セミインテグレーテッドとも呼ばれますが、ほとんどの場合 ZeroStack ゼロスタックと呼ばれます。他にも Low Profile ロープロファイルや Internal インターナル、さらには Integrated with Cups という名称もあります。Threadless スレッドレス同様ベアリングカップをヘッドチューブに圧入しますが、ベアリングカップ本体がヘッドチューブの中まで入り込む点が Threadless スレッドレスと異なります。

Integrated インテグレーテッド

ロードバイクでよく使われます。圧入は不要です。ベアリングカップの役目はフレームが果たしますので、いきなりベアリングをフレームに装着します。Integrated インテグレーテッドは統合という意味です。ヘッドセットの一部であるベアリングカップとヘッドチューブが統合されていますね。Integral インテグラルも同じ意味です。しかし、Hozan では Integral インテグラルを広い意味で使っているらしく、ZeroStack ゼロスタックをも Integral インテグラルと呼称 しています。こうした表現は好き好きだと思いますが、ZeroStack ゼロスタックを指して Integral インテグラルと呼ぶとますますカオスになるので私はこうした表現はしません。

ヘッドセットの種類まとめ

まとめると、ヘッドセットには Ahead アヘッドと 1. Thread スレッド (ネジ切り) があって、前者には 2. Threadless スレッドレス, 3. Integrated インテグレーテッド (IS), 4. ZeroStack ゼロスタック (ZS) があります。他にもマイナーな規格があるようですがこの 4 つだけ覚えておけば問題ありません。

フォークベアリングカップ位置名称S.H.I.S.
ねじ有ヘッドチューブの外スレッド (ねじ切り)EC ~ tpi
ねじ無スレッドレスEC
ヘッドチューブの中ゼロスタックZS
なし (ヘッドチューブ
自体がカップ)
インテグレーテッドIS

ヘッドセットのサイズ

ヘッドセットのサイズと言ってもヘッドセット周りには色々の部位のサイズがあります。フォークコラムのステムクランプ部の外径、フォークコラムのクラウンレース部の外径、ヘッドチューブ下部の内径、ヘッドチューブ上部の内径です。

クラウンレースは狭いところに強引に押し込む構造になっているので、フォークコラムのクラウンレース部の外径はステムクランプ部の外径よりもほんの少し大きくなっているのが普通です。ヘッドチューブ下部の内径と上部の内径は一致していることが普通です。一般的にはヘッドセットのサイズはフォークコラムのステムクランプ部の外径のサイズで認識されます。サイズは 4 つあります。

  • 1 インチ: 25.4 mm
  • 1 と 1/8 インチ: 28.6 mm (オーバーサイズ)
  • 1 と 1/4 インチ: 31.8 mm (ワンワンフォー or スーパーオーバーサイズ)
  • 1 と 1/2 インチ: 38.1 mm (ワンポイントファイブ)

ヘッドセットの構造

ヘッドセットは上部分と下部分で構成されており両者は別々の部品です。そのため、上部が ZeroStack ゼロスタックで、下部が External Cup (外部ヘッドセット) ということもありえます。また、ヘッドチューブ下部の内径と上部の内径が一致していないフレーム (テーパードフレーム) もあるため上部と下部でサイズが違うこともあります。そのため、フォークコラムのステムクランプ部の外径のサイズだけでは、正しいヘッドセットを選択することができない場合もあります。

Standardized Headset Identification System (S.H.I.S.)

ジンマシンが出そうになるほどイライラさせてくれるこの状況を打破すべく提唱されたのが S.H.I.S. です。S.H.I.S. を直訳するとヘッドセットの標準識別システムですが、簡単に言うとヘッドセット規格の表記フォーマットです。

ゼロスタックは ZS44/28.6 | ZS44/30

この表記フォーマットに従うと通常の ZeroStack は ZS44/28.6 | ZS44/30 と表記されます。縦棒の前がヘッドセット上部の規格、後ろが下部の規格です。

「ZS」44/28.6

最初のアルファベット 2 文字がヘッドセットの種類を示しています。External Cup (外部ヘッドセット) は EC, Integrated インテグレーテッドは IS, ZeroStack ゼロスタックは ZS です。3 種類しかありません。ベアリングカップが外にある (EC) か、内部にある (ZS) かヘッドチューブに統合 (IS) されているかです。

ZS「44」/28.6

3 文字目と 4 文字目の数字はヘッドチューブの内径を示しています。簡略化するために強引に 2 文字にしており、29.9 ~ 29.85 は 29 で 30.10 ~ 30.05 は 30 というように事前に決められています。

ZS44/「28.6」

スラッシュの後ろは、フォークコラムの外径です。上部はステムクランプ部の外径、下部はクラウンレース部の外径を示しています。

ねじ切りは?

ねじ切りフォーク用のヘッドセットはステムクランプ部の外径の後ろにねじのピッチを記載します。例えば、EC30/25.4-24tpi | EC30/26 や EC34/28.6-26tpi | EC34/30 や EC37/31.8-26tpi | EC37/33 と記載します。tpi は 1 インチに何山のねじがあるかを示しています。

ZS49/28.6 | EC49/40 は?

ZS49/28.6 | EC49/40 であれば、ヘッドセット上部は ZeroStack ゼロスタック, ヘッドチューブ上部の内径は 49.6 mm, フォークコラムのステムクランプ部外径は 28.6 mmです。ヘッドセット下部は External Cup (外部ヘッドセット), ヘッドチューブ下部の内径は 49.6 mm, フォークコラムのクラウンレース部の外径は 40 mm です。オーバーサイズとワンポイントファイブのテーパードですね。何て分かりやすいんでしょう。

例示

Campagnolo カンパニョーロの Hiddenset ヒドゥンセットは S.H.I.S. で言うと IS42/28.6 | IS42/30 です。

ヘッドチューブ内径について

ヘッドチューブ内径の ID はヘッドパーツの種類によって異なります。

ヘッドパーツの種類S.H.I.S. name実サイズ
EC, ZS2929.9 - 29.85
3030.10 - 30.05
3433.95 - 33.90
3736.95 - 36.90
4141.40 - 41.35
4444.00 - 43.95
4949.61 - 49.57
5655.95 - 55.90
IS3838.15 - 38.25
4141.1 - 41.2
4241.95 - 42.05
4747.00 - 47.10
4949.10 - 49.20
5252.05 - 52.15

フォークコラム外径について

部位S.H.I.S. name実サイズ範囲
ステムクランプ部25.425.4 - 25.25
28.628.6-28.45
31.831.75-31.60
38.138.202-37.074
クラウンレース部2626.43 - 26.49
28.627.03 - 27.09
31.830.015 - 30.075
38.133.03 - 33.09
4039.79 - 39.85

S.H.I.S. の現状

この素晴らしいフォーマット S.H.I.S. にも最大の欠点があります。フレームメーカーに支持されていないということです。ヘッドセットメーカーには絶大な支持を得ているのですが、ほとんどのフレームメーカーはこのフォーマットを知らないらしく S.H.I.S. を表記していません。小売店が S.H.I.S. を表記してくれている場合もありますので、全く使えないという訳ではありませんが、ほとんど使えません。

[Cane Creek] ZS-3

現在、様々なメーカーがヘッドセットを製造していますが、私は Ahead アヘッドのパイオニアたるケーンクリーク製のヘッドセットを選択しました。

ケーンクリークのヘッドセットは 2011 年に大規模なモデルチェンジがあり、ZS 3 は製造中止になりました。今で言うと 40.ZS44 に相当するかと思います (価格帯としては 40.ZS44 のカーボンモデルより上)。

[Cane Creek] ZS-3 仕様
社名Cane Creek (アメリカ)
パーツ名ZS-3
種類ゼロスタック (セミインテグレーテッド)
サイズオーバーサイズ (1 と 1/8 インチ)
規格ZS44/28.6 | ZS44/30
素材6061 T-6 Aluminum
公称重量74.7 g
実測重量本体 74.82 g + トップキャップ 16.54 g
写真: cancreek_zs3_weight_1 写真: cancreek_zs3_weight_2 写真: cancreek_zs3_weight_3
送料込み購入価格Wiggle (英国) で 35 ポンド (4,490 円) くらい
(入手先一覧と製品サイト)
[Cane Creek] 110 Interlok Spacer 仕様
社名Cane Creek (アメリカ)
パーツ名110 Interlok Spacer
Blue, Red, Silver, Black, Purple
オーバーサイズ (28.6 mm)
高さ20 mm, 10 mm, 5 mm, 2.5 mm (Top)
素材7075 T-6 Aluminum
実測重量Black 2.5 mm: 2.61 g,
Black 10 mm: 6.43 g

その後、下記のヘッドセットを購入しましたので実測重量を紹介します。

[Cane Creek] 40.EC34 仕様
社名Cane Creek (アメリカ)
パーツ名40.EC34
種類スレッドレス (セミインテグレーテッド)
サイズオーバーサイズ
規格EC34/28.6 | EC34/30
素材6061 Aluminum
公称重量98 g
実測重量本体 91.65 g
 (上部: 46.66 g,
 下部: 34.38 g,
 クラウンレース: 10.61 g)
トップキャップ: 16.60 g
送料込み購入価格3,231 円
(入手先一覧と製品サイト)

別に購入した同じクラウンレースは 10.51 g でした。


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  1. Surly Pacer 2012

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    スタ好き 2012 年 1 月 23 日
    こんばんは。怒涛のロードバイク関連の更新ですね。 私も今年は4万円ほどで購入したシティバイク(?)からのステップアップを考えていたので、助かりました。 今のところ、よりお手軽なクロスバイクを考えていましたが、最初からロードバイクというのもいいなと思い始めています。 どの記事も読み応えのあるしっかりした記事なので、必要なタイミングに合わせて参照させていただきます。 そうそう、燻製もようやく挑戦して、以前の記事を参考にさせていただいたおかげで大成功でした。
    プロ 2012 年 1 月 23 日
    いつもコメントありがとうございます!! 私も 4 万円くらいのママチャリからのステップアップです。当初は 20 万円くらいの予算でロードバイクを買おうと思っていたのですが、自作なら同程度のロードバイクが半額くらいになるようだったので自作することにしました。 先日、完成したロードバイクを試走させたのですが、ドロップハンドルにして良かったと心の底から思いました! 長い間書きためてきたのであと 30 日くらいは連続で更新すると思います。
    とよぴん 2013 年 6 月 23 日
    当方、2003-2004当時の「Bianchi EV3」を愛用しておりますが、ヘッドパーツの交換をしたいと考えています。 現在、FSA ZSシリーズ(FSA ZA-3)が装着されているようですが、 これをChris King の Insetシリーズに交換することは可能でしょうか? また、交換するに際しての留意点などがありましたら、ご教示お願いいたします。
    プロ 2013 年 6 月 23 日
    FSA の Orbit ZS-3 でしょうか? 保証はできませんが Orbit ZS-3 は 寸法 から判断しておそらく ZS44/28.6|ZS44/30 だと思います。 Chris King の ZS44/28.6|ZS44/30 は InSet1 ですのでこれなら交換可能だと思います。 交換時の留意点としては、まず、新部品購入前に旧部品の寸法を測り新部品と同じ寸法かどうか確認することです。次に、圧入時にゆっくり圧入することです。圧入し過ぎには十分注意してください。
    とよぴん 2013 年 6 月 29 日
    誤記載、申し訳ありませんでした (^_^;) 「ZS-3」です。 このころのBianchiのアルミ製のロードバイクは、ケーンクリークやFSAのゼロスタック系ヘッドパーツ装着が多いようです。 クリスキングの評判を多方面から好評と伺いますので、このバイクに是非ともクリスキングを…と考えていますが、素人にはヘッドパーツの多岐に渡る規格があまりよく理解できないです。 今回のように、寸法等で明確にご指摘いただけると、本当に安心して納得できました。 ご教示ありがとうございます m(..)m!
    プロ 2013 年 7 月 9 日
    こちらこそ、嬉しいコメントありがとうございます。私も素人ですが、調べていくうちにこんなに複雑なのかと驚いてしまいました。 FSA は S.H.I.S. を公開していませんので、換装が成功したかどうか教えていただけると更に嬉しいです。報告お待ちしております。
    とよぴん 2013 年 7 月 28 日
    ご報告、遅くなりました。 結果から申し上げますと、EV3へは問題なく装着できました。 この際でしたので、同世代のEV4、 2006-07前後のFG LITEも所有しておりますので、全て当ててみましたが、どれも問題なく装着可能でした。 上記の3種は、発売されていた国のディーラーによって、FSA ZS or Cane Creek zsシリーズのいずれかが装着されていたそうですが、それぞれがご教示いただきましたZS44/28.6|ZS44/30 の規格だったようです。 特にFSA ZS3からInset1へ換装したインプレですが、Inset1の構造上からか、ハンドルの切り回しがかなりクイックになり、ステム長を10mm伸ばしても、何の不安も感じられませんでしたので、走行時の安定感と操舵感双方が向上した印象です。 特にカーボン製から金属製のコラムスペーサーにも換装したために、安定感をより感じることができた印象です。 決してChris Kingの信者ではありませんが、FSA ZS3+カーボン製コラムスペーサー+フルカーボンフォークの組み合わせからは、間違いなく安定感と剛性感が得られましたので、この組み合わせの「お試し」は明確にアリです。 本当にありがとうございました。 
    プロ 2013 年 7 月 30 日
    換装成功しましたか! 良かったです。寸法上は ZS44/28.6|ZS44/30 だと思ったのですが、確証がなかったので実は成功するかどうかちょっと不安に思っていました。無事に成功して良かったです。 自分で収集して情報をまとめただけなのですが、こうしてお役に立てたのであれば嬉しいです。 自転車は繊細なのでちょっとした部品を換えるだけで驚くほど印象が変わりますよね。とはいえ交換しただけで操舵感がクイックになるとは、よほど精度が高いのでしょうね。次の自転車ではクリスキングを検討してみます。 ご報告ありがとうございました。

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