モペットに CVT を
日本最大の自転車の展示イベント、サイクルモード 2011 の大阪会場に行ってきました。目的は自転車用 CVT システム、NuVinci (ヌビンチ) N360 の試用と購入予約です。
FK310 の変速システムにはママチャリ用の内装 3 段が使われていますが、これには欠点があります。耐久性とギアレシオの問題です。
内装 3 段の耐久性
シマノの内装 3 速は自転車用ですので耐久性が低く、FK310 のエンジンのトルクにより破壊されてしまうことがあります。ギアチェンジ時にアクセルオフをして回転数を合わせる事で、ある程度は予防できるのですが、手動クラッチがないため限界があります。私も二度ほど壊しました。
ちなみに FK310 の最高出力は 0.8 ps (588.4 W)/ 4,500 - 5,500 rpm、最大トルクは 0.15 kgm (1.47 N・m)/ 3500 - 4500 rpm です。
内装 3 段のギアレシオ
FK310 の最大の欠点は加速の悪さです。幸か不幸か FK310 はパワーが小さく 3 速を回し切れていない (2 速と同じ回転数まで上げられるなら 3 速時には 50 km/h 以上出るはずだがそうはならない) ため、内装 3 速のスプロケットを変更すれば 3 速時の最高速度はそのままに、加速をある程度良くすることができます。
FK310 の内装 3 段は SG-3R40 というユニットでギア比は 1 速が 0.733、2 速が直結で 1.000、3 速 が 1.360 です。後ろのスプロケットは 14T、前ギアは 28 T ですから最終ギア比は 1.467、2.000、2.720 です。ここで後ろのスプロケットを 16T に変えると 1.283、1.750、2.380 になります。実際にやってみると分かりますが、加速は良くなるものの下り坂でスピードがあまり出せなくなってしまい、あまり気持ちよくありません。やはり、たったの 3 速では限界がありもっとたくさんギアが欲しくなります。
そこで内装 8 段? いいえ NuVinci です。NuVinci は自転車用の内装変速システムですが、ギア式の変速システムではありません。無段階変速システム、そう、CVT です。
NuVinci の耐久性
ギア式の変速システムは変速中に大きなトルクがかかると不具合を起こしますが、CVT ではその心配はありません。
NuVinci の耐久性は折り紙付きです。代理店の方に聞いたところ、NuVinci は日本のオートバイメーカーに持ち込んで試験をしている実績があるくらい (250 cc のオートバイだとメーカーの安全基準を満たせなかったと言っていました) なので、自転車にかかるトルクくらいではビクともしません、と教えてくれました。
ちなみに 250 cc のスクーターの代表格のマジェスティのパワー (トルクに回転数を乗じたものがパワー) は 19 馬力 14,000 W 弱です。31.7 cc の FK310 の出力くらいではビクともしません。それでは、エンジン+人力アシスト時はどうでしょうか。
自転車の世界選手権を二度制覇したタイムトライアルスペシャリストでさえ 2 馬力弱ですので、合計しても 3 馬力弱。人類の脚力では NuVinci を破壊することはできません。
NuVinci N360 のギアレシオ
NuVinci N360 はギアレシオにおいても圧倒的に優位です。NuVinci N360 のギア比は何と 0.5 ~ 1.8 です。リアが 16T なら 0.875 ~ 3.15、18 T なら 0.778 ~ 2.800 です。まさに圧倒的。完璧です。なお、NuVinci N360 は標準で 18T のスプロケットが付属するそうです。
また、FK310 ではチェーンがたるんでいると変速時にチェーンのテンションが急激に上昇し、フレームにトーションがかかって、エンジン接合部周辺のフレームが折れることがありますが、CVT の変速は滑らかで継ぎ目がないため、NuVinci ではこうしたことは起きません。
その他
また、NuVinci は内装変速システムよりもパワーロスが少ないのでわずかながら最高速度の向上も見込めます。
ただし、重量は不利。内装 3 段 は 約 900 g、内装 8 段は約 1,700 g であるのに対し NuVinci N360 は 2,450 g あります。
現在は後継品を開発中だそうで、これが完成すれば今より 30% 軽量化できるそうです。後継品は時期は明言できないものの数年以内に販売したいとのことです。三年とか言ってたような言ってないような。
実際に試乗してみて
CVT は車やバイクにおいてはオートマですが、NuVinci N360 はマニュアルです。グリップシフトをググッと回すとペダルが滑らかに重くなっていきます。実際に試乗してみましたが、まず「たくさん回さなくてはならないなぁ」という印象を持ちました。しかし、これはグリップシフトがあまりに滑らかなので、最初から最後まで一気に回したくなるために生まれる印象です。実際には 3 段ギアにおいても最初のギアから最後のギアまで手を持ち替えずに一気に回すことはないので、それほど問題にはならないと思われます。むしろ、細かく変速できますので便利かもしれません。
オートマの NuVinci Harmony というモデルもあるのですが、うっかりしていて試乗するのは忘れてしまいました!
現在 NuVinci は日本では購入できず ebay から個人輸入するしかありませんでしたが、日本の代理店 (三洋貿易) では拡販を考えているそうです。手始めに、サイクルモードで NuVinci のブースに訪れた人を対象にサービス価格で販売してくださるとのこと。もちろん私も申し込みました。
リアエンド幅など組み込みには多少ハードルがありますが、組み込みが完了しましたらまた記事にいたします。遅くとも 2012 年 3 月までには何とか記事にしたいと考えています。NuVinci N360 の仕様は Fallbrook Technologies のデータシート に記載の通りですが、抜粋して下に転載しておきます。
色 | 銀 or 黒 |
---|---|
対応ブレーキ | ディスクブレーキ or リムブレーキ or ディスクブレーキ |
スポーク穴数 | 32 or 36 |
ギア比 | 0.5 ~ 1.8 まで無段階 |
対応スプロケット | 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22 (9 速仕様) |
ハブ重量 | 2,450 g (シフター重量は不明) |
オーバーロック ナット寸法 | 135 mm |
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