耳栓のいろは
2005 年 12 月 13 日
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はじめに
私は比較や調べ物が大好きです。好きというよりむしろ中毒に近いかもしれません。国家試験の前日であろうと祖父が病床にふせていようと、何か気になったら即座に調べずにはいられません。
昔は百科事典に乗ってるようなことしか調べられませんでしたが、インターネットという人類の叡知との遭遇により状況は一変しました。どんなくだらないことだって気が済むまで徹底的に調べることができるようになりました。そうして集めた非常にくだらなく、かつ、ほとんど誰の役にも立たないような情報をここで公開していきたいと思います。
第 1 回は耳栓ユーザーへ贈ります。この文章を最後まで読むのは忍耐力が必要ですが、それでもあなたがより良い遮音環境を得る助けになるでしょう。
このページの一番上に戻るきっかけ
さて、耳栓ユーザーのあなたはどういう耳栓を使っているでしょうか。3M? サイレンシア? 私は 3M の 3 段キノコ (フランジタイプ) をずっと愛用していました。同じく 3M のウレタンフォームよりもずっと遮音性が高いと信じていたからです。
ちょっと痛いときがありましたが我慢していました。しかし、あるとき 3M のウレタンフォームを装着してみると、なんとこちらのほうが圧倒的に遮音性が高いではありませんか。愕然としました。
「オレの 2 年間の我慢は一体何だったんだ…?」と。そこでニの轍を踏まないために耳栓について調べました。
すると遮音性には基準があることが分かりました。よく思い出してみれば 3M の箱の裏にも周波数毎の遮音性が書いてあったような気がします。3M の指標は正確ですが他の製品と比較しづらいのが欠点です。もっといい基準がありました。
このページの一番上に戻る遮音性能のベンチマーク (評価基準)
NRR です。Noise Reduction Rating の略で米国環境保護庁 (EPA) が策定した厳格な指標です。直訳すれば騒音削減指標。NRR が 20 dB なら 70 dB の騒音を 50 dB に減らすことができるという分かりやすいものです。実際には遮音性の感じ方は個々人によって異なり、NRR が 20 dB の製品であっても 70 dB の騒音を 45 dB に減らすことができたと感じる人もいます。その逆もあります。NRR は 98% 程度の人がそれ以上の遮音性を体感できるという尺度で計算されています。
その NRR をもとによい製品を探したところ世界一の耳栓の NRR は 33 dB であることが判明しました。世界最高というからには NRR は 50 dB くらいかなと思っていたのでちょっと不安でしたが、実際に NRR が 33 dB の耳栓を装着してみるとその懸念は吹き飛びました。
素晴らしい静けさで、耳からの騒音はほぼ排除できます。「耳から」というのは顔にぶつかって骨を伝ってくる騒音や内臓のうごめく音までは排除できないということ。それで 33 dB。耳栓ではこれが限界でしょう。これ以上の遮音性を必要とするならフルフェイスのヘルメットをかぶったり防護服を着用するしかなさそうです。
騒音値 dB(A) | 騒音例 |
---|---|
130 dB | ジェット機の離陸 |
120 dB | 杭打ち |
110 dB | 自動車の警笛 (前方 2 m) |
100 dB | 電車が通るときのガード下 |
90 dB | 騒々しい工場の中 |
80 dB | 地下鉄の車内 |
70 dB | 電話のベル |
60 dB | 静かな街頭 |
50 dB | 静かな事務所 |
40 dB | 図書館 |
30 dB | 深夜の郊外住宅地 |
20 dB | 木の葉のふれ合う音 |
耳栓の価格
日本では何故か耳栓がやたら高額ですね。耳栓の材料費なんか 1 ペアで 3 円するかどうかというところだと思いますが日本では法外な値段でしか手に入りません。中身より包装のほうが高そうです。何故でしょうか。
需要が極めて少ないせいだと思われます。これは私の推測ですが耳栓が世界で最も使用される場所は射撃場ではないでしょうか。屋外ではそうでもないのですが射撃場では銃声がかなり響きます。アメリカでは、射場によっては耳栓がどっさり積んであって「ご自由にどうぞ」というところもあるようです。そうした耳栓は 1 日で捨てます。日本にも射場はありますが射撃人口はアメリカの比ではないでしょう。
このページの一番上に戻る耳栓は 1 回使い捨て
そもそも、メーカーもスポンジ式の耳栓は 1 回で使い捨てることを念頭においており、複数回使用することは衛生的に好ましくないとしています。また、スポンジ式の耳栓は遮音性もどんどん劣化していきます (個人的には耳栓がちょっと柔らかくなった時に遮音性がピークを迎えその後は徐々に劣化していくように思います)。毎日使うような場合には少なくとも週に 1 度以上の頻度で交換する必要があります。これはカナル型イヤホンのチップにもまったく同じことがいえます。スポンジ式のチップは週に 1 度以上の頻度で、できれば毎回交換しましょう。最悪、外耳炎を誘発します。
このページの一番上に戻る耳栓は奥まで突っ込む
耳栓の遮音性能は挿入深度にかなり依存し、痛みと遮音性能はトレードオフ (二者択一) の関係にあります。すなわち鼓膜付近まで挿入すると、遮音性能は良くなるが痛みが強まります。浅く挿入すると、痛みは和らぐが遮音性能は格段に落ちます。
耳栓を奥まで挿入するためにはコツが必要です。まず、手のひらで転がしながらつぶします。転がさずにつぶすと平たくなってしまって深く挿入できません。次に、つぶした耳栓を左手の親指と人差し指ではさみます。つぶれ具合を維持できるように強くはさみましょう。それから、右手を頭の後ろから回して左耳をつかみ、後ろに引きます。そして、左手で耳栓を差し込みます。耳を後ろに引っ張ることで耳道が真っ直ぐになり簡単に奥まで挿入できます。
遮音性は挿入深度だけでなく首の角度によっても変化します。下を向いていると耳の穴の形が変化し遮音性が下がります。できるだけ背筋と顔面を平行にしましょう。
このページの一番上に戻る耳栓と慣れ
耳栓全般の注意点として、使用当初は装着に痛みをともなう場合があります。使用するにつれ耳栓が変形し痛みはやわらいでいきます。耳道も変形するという指摘もありますが、今日までほぼ 2 年間毎日耳栓を装着し続けた私の耳道はそれほど変形していないと思います。いまだに痛い耳栓は痛いですからね。
さて、耳栓の基本的なことがこれで分かりましたが、実際に遮音性の高い耳栓はどれなのでしょうか。次の記事で比較していますので参照してください。
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